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ブラック仕事をフェルミ推定で数字にしてみた

本記事はアフィリエイト広告を含みます。

 フェルミ推定についてまじめに語る内容ではないので、フェルミ推定の定義とか難しい話はいっさいやりません。
元々のタイトルが

「いい加減なフェルミ推定をやってみた」

なのでお察しして知りたい人はググってください。フェルミ推定が日本でよく用いられるようになったのは、GAFAM(Google・Amazon・Facebook(現Meta Platforms, Inc)・Apple・Microsoftの企業名の頭文字)やコンサルティング会社などの意識の高い企業での入社試験の問題に使われるようになってからですね。その後意識高い系から低い系まで真似を始めました。

「日本にある電柱の数は何本ですか?」とか
「東京都にある信号機は何台ありますか?」といった

実際の数字なんて答えようもないし出題した面接官だってこんなのは知りません。

そんな面接官は一発ぶんなぐって帰りたい所ですが、知識を尋ねる訳ではなく論理的思考力を問う為の問題です。

私のいい加減なやり方でこんなものかと思ってください。

(2023年1月10日初稿)

目次

DX前夜のとてつもない面倒くささ

紙とデータと生の答案がミックスされてやってくる

 昔々、某山口大学の某学部で教務課で勤務していた。

 私の業務は主に学生情報を登録してある某学部がAccessとExcelで独自に構築した教務電算システムの運営だった。

 運営といっても、学生の履修申告をシステムに登録したり住所などの学生データを登録して情報が古くなったらメンテを入れ、学部運営に必要なデータを抜き出して整形して資料にするのが主な仕事である。

 それだけならいいのだが、厄介な事に学生の定期試験の成績から単位の取得まで入力してやらなければならなかった。

 今ならオンラインで授業の履修登録も学生に任せ、定期試験の成績も担当教官が自分でオンラインシステムで入力する事になっているが、私が勤務していた頃はDXが中途半端にしか進んでおらず、試験の成績は

  • 生徒の答案に教官が直接採点したものの束
  • Excelで教官が作成した学生データとテストの点数をまとめた表を印刷したペラ紙
  • Excelで教官が作成した生データが入ったフロッピーディスク

 とバラバラであった。

 当時はまだデジタル化について全学でのコンセンサスが取れておらず、採点結果の提出についても決まりがなかったのでこんな事になっていたんである。

 おまけに教務電算システムは学部独自で詳しい教官によって構築・アップデートをされていたので

「なんであんたんとこのローカルルールに従わなくちゃいかんわけ?」

 と生徒の答案に赤で採点をした束が山ほど届くのだった。

ここで問題です

これで酷い目にあうのは誰でしょう

 間違いなく私である。

 担当している教務電算システムにとって学生の成績データは当然管理対象で、最終的にはシステムのデータを加工して作成した資料を元に卒業判定をしなくてはならないのである。

 つまり、上にあげた3つの方法で届いた試験の結果は全部私が責任を持って教務電算システムのデータベースに登録しなくてはならないのだ。

 幸いといっていいのか、

「③Excelで教官が作成した生データが入ったフロッピーディスク」についてはシステムを構築してくださった教官がExcelデータを自動でAccessに取りこませるマクロを作ってくれていたので多少は楽であった。

①生徒の答案に教官が直接採点したものの束
②教官が作成したテストの点数一覧の表

こればかりは紙なので教務電算システムには私が入力してやらなければならない。

白ヤギさんのように誰かが食べてくれたらどんなに良かったろう。

現場猫の手でも借りたい

 入力したデータについては少し後においておくが、教官から提出された採点結果と私が入力した採点結果との間に違いがあってはならない。

 どうなるかというと、今度はシステムから私が入力した科目の成績一覧をプリントアウトして紙の元資料と照合して転記ミスがないか確認しなくてはならんのである。

 しかも入力したデータ全てにこのチェックを行わなくてはならない。

 上に書いた、Excelファイルの形でいただいてマクロでAccessに取り込んだ採点結果も例外ではない。手入力する手間は省けたが、教務電算システムの取り込み機能に予想していないバグがないとは断言できない。

 泣く泣くこれもシステムから科目ごとに成績一覧をプリントして、Excelファイルも印刷してお互い照合してミスがないか照合をかけなくてはならなかった。

突然ですがフェルミ推定のお時間です

私は一回の定期試験で何件のデータ処理をしたことになりますか?

 ようやくここでフェルミ推定が出てくる。別にフェルミ推定なんか使わなくても当時なら何件入力したかとかすぐわかったのだが、そんな事を考えている余裕なぞない私はとにかく目の前の数字を入力しては打ち出して照合してと定期試験の結果発表までに間に合わせる事に必死だった。

前提❶

私が当時勤務していた学部の定員は1学年400人である

前提❷

1・2年生は教養・専門基礎の合わせて10科目の試験を受けるとする
3・4年生は専門のみの5科目の試験を受けるとする

結論

入力が必要なデータ件数=試験科目数×学生数と仮定して

1・2年生が受けた試験科目数×学生数=10×800=8000
3・4年生が受けた試験科目数×学生数=5×800=4000   
合計 12,000

入力が必要な、かつその後打ち出して目視で照合を行わなければいけないデータ件数は12,000件である

 これたんなる頓智じゃねえか、何フェルミ推定なんて偉そうな事を言ってんだと思うかもしれないが、フェルミ推定ってごくごく簡単な例でいうとこういうもんなんである。

 今となっては具体的な数字が出せない時に、論理とそれに必要な最低限度の知識をもとに行う

「推定」

 なのだから。本来は具体的な数字が出せない時に論理的思考で短時間で概算する事である。

デスマーチ発生

 と、いう訳で1万2千件のデータを入力し、入力したらもう一度プリンタで打ち出して教官から提出されたデータと間違いがないか一件一件照合していった訳であるが、それだけやっている訳にもいかない。

 他の仕事も並行して進めねばならず、かといって他の係員はそれぞれ自分の仕事を持っており手伝ってもらう訳にもいかない。

 自転車で五分の家に帰る気力が無くなって宿直室に居座りだしたのはこのころである。

 金曜に残業して、土曜日少しだけいつもより遅く休日出勤をしてそのまま家に帰らず徹夜で作業を続け、日曜日もそのまま作業を続けて月曜に日付が変わったあたりに切り上げて帰宅したのもこの頃だった。

 ちなみに土曜日も休日出勤をしていて日曜にも仕事をしにきた人がいたが、それは当時の学部長だった。

「まだ帰ってないのか!」と驚かれた。

 学部長という仕事も激務だなと当時は思ったが、平の職員がトップと同じ激務というのは正直いって何かがおかしい。

 学部長は顔や雰囲気が面白い、と言っては変だがなんとなくユーモラスな所があり、時折パソコンのトラブルやオフィスソフトのトラブルで呼び出しがあったりしたがそれはわりとリラックスできる時間だったのを覚えている。

あら、この人ひょっとしていい人?

 学部長は唯一私を庇ってくれたというべきなのか次の日に教務係までやってきて

「あそこまで働かせてだめじゃないですか、ちゃんと部下を休ませなさい」

 と係長に雷を落としていた。

 その後何も変化が無かった事を見ると係長は

「そんなん儂しらんし」

 と思っていたようだ。デスマーチが始まってから、職場に置いてある出勤簿に残す記録とは別に自分でその日の残業時間を記録し始めていたのだが、何だかよくわからないうちに倒れて実家に強制送還されてしまい公務災害(民間でいう労災)の主張もできなかったのが残念である。

原因はなんだったのか

 せっかく生徒の住所から登録した授業に成績データまで統一管理できるシステムがあるというのに、なんで紙できたデータを入力して又プリンタで打ち出して目視で突合するという「車輪の再発明」のような事になっていたのかと思う。

 当時はウィンドウズ98の時代で

「パソコンが立ち上がらんぞ!」

 と事務長(事務方のトップ)に呼びつけられたら、フロッピーディスクを差し込んだまま起動させようとしていただけだったり(注:フロッピーディスクの時代は、フロッピーディスクをドライブに挿入したままだと起動しないようになっていたんである)

 エンドユーザーでITリテラシーがある人が少なく、Excelファイルでの結果提出を学部内ですら徹底する事ができなかったのが全ての原因だったのかなと思う。

その後、業務システムが全学に導入され成績はオンラインで教官が入力するようになり、事務方が独楽鼠のように走り回らさせられる事はなくなった。

 ま、その頃には私は当に休職して戻ってきてからは農場に島流しになっていたので関係ない話である。



 
 

 



 

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コメント一覧 (2件)

  • 詳しいことは、畑違いなので理解できない事が多かったのですが、
    一つ言えることは、

    本当にブラックすぎる職場だったと思います
    学校勤務の悲惨さは体験済みなので、(教員)さもありなんなのですが、どういうことですか?!
    普通に休日出勤する事がまかり通っていて良いのかしら?

    ダメでしょう

    休みはきっちり休んで、平日の仕事を頑張るという当たり前の生活ができないでしょ

    しかも電話に出ないやら、自分で調べたら良いことを人に押し付けるなんて、そんなの社会人でありません

    まぁ、真っ当な職場ではなかったということですよね

    それを証明して、労基に泣きつく事ができなかったのは、残念だしひどい

    これじゃあ、どんなに優秀な人でも、メンタルをやられますよ

    まずは、人命を大事にしないと
    そこのところが、なおざり

    その上司に言ってやりたいですよ
    『あんたはマトモですか?今も誰かをいじめてるんですか?それともご自分が病んでしまっていませんかね??』

    • まどかさんがコメントを寄せてくださっていた事に3ヶ月気づきませんでした……すみません
      更新どころかチェックもなおざりになっていたやる気のなさに恥じ入るのみです

      私が担当した業務ですが、激務で身体を壊して辞めた前任者がそこそこいたらしく

      「ひろぽんさんは戻ってこられただけ凄いですよ」

      と病休から復職した際に親しい事情通の先輩から聞かされました

      上司が業務を把握してハンドリングする事を放棄していてサービス残業も休日出勤も全て

      「彼が勝手にやっていたことで私が命令したことではありません」

      と事実ではありますが切り捨てにかかったのは虚しかったですね

      思えばこの頃から色々どうでも良くなってきた気がします

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