MENU

地味に辛いよロンドン留学③「パリで終電逃した」

前回のおはなし

【前回のあらすじ】
 留学先のロンドンに到着したのは良いが到着時間をちゃんと確認していなかったので夜中の11時に郊外の誰もいない住宅地を一人さまよう事になったが自業自得なので何も言えねえ。

【今回のおはなし】
 詰めが甘いのは2年前から一歩も進歩していないという話。

 (2023年10月25日初稿)

目次

旅の終着点

2か月かけた旅行記はこちらから

 今回の話は留学する約2年前の事である。

 私は友人と欧州を鉄道で二か月かけて一周する旅をしていた。(上記参照)

 延々とお互いむさくるしい顔を突き合わせていると次第に会話が少なく殺意が増していき、音楽性が違うという事で別々のルートに分かれ、最後にパリで落ち合って日本に帰る事にした。

 私はイタリアやドイツ、その後独りでハンガリーに向かった所でそこを折り返しにして夜行列車でパリまでやってきた。
 

ロンリー★プラネット

 「ロンリー・プラネット」というのは「地球の歩き方」の英語版と考えて貰えばよい。

 世界各地を網羅していてもおかしくないと言われるその情報量は、日本の風俗街すらガイド可能だという。

 それと比べて「地球の歩き方」はその情報の怪しさから別名「地球の迷い方」と呼ばれるほどいざという時に裏切られる事で有名だった。

 パリに独り夜行列車で到着し、街、というか宿が動き出すのを待ちながらガイドブック片手に手近な宿を探してカフェでクロワッサンなど食べてみる。
 なんというか、独り旅という風情が漂っている。

 カフェの客はほとんどが仕事前に立ち寄った常連客らしいが、そんな中で豪華とも言えない普通のメニューをパクついている自分というのが妙にかっこよく思えたんである。

 あてをつけていた宿がオープンし、早速チェックインの手続きを取る。

 この宿、実はソルボンヌ大学のご近所さんであり私が通された屋根裏部屋の破風窓からはそれらしき建物が見え隠れする。

 屋根裏部屋というのも普通の客室とは違いこじんまりとした生活感のある部屋で気分はソルボンヌ大学に留学してきた学生のようである。

 3日間しかいなかったので滞在と言えるほど長逗留でもなかったのが残念ではあった。

一人で生きるもん!

 宿で荷をほどき、さてどうしたものかと途中のインフォメーションセンターで貰ってきたパンフレットや路線図、「地球の歩き方」などを参考に予定を立てる。

 完全に自分独りで動けるのは久しぶりであり喜ぶべきことではあったのだが、意見を交わす相手、どうでもいい事で雑談に発展する相手がいないというのはいささかつまらない。

 とはいえさすがパリである。観光名所はあちこちにあり、ベルサイユ宮殿からルーブル美術館までよりどりみどりである。

 早速その日はベルサイユ宮殿を観光に行って、なぜか落ちていた犬の糞を踏んでしまった

 まあ、ベルサイユ宮殿自信トイレが無くて当時の王侯貴族たちはあちらこちらで野外リリースにいそしんでいたという。(というのは俗説で、一応トイレ設備はあったらしいのだが非常に数が少なかった為そのような伝説が生まれてしまったのだ)

 念のためそこらの葉っぱで靴をキレイにして宮殿に入り、宮殿との摩擦力で靴にこびりついた×××が落ちるのを期待しながら回っていた。

 と、いう訳で私はベルサイユ宮殿の中がどんなだったかほとんど覚えていない。宮殿の外の造園はその技術の高さと美しさが印象に残っているのだが、そこでウンがついては仕方がない。

 パリから少し離れた場所に位置するベルサイユ宮殿は丸々一日使うほどでもなくショートトリップで終わってしまった。

 ホテルまで一旦もどり、何か面白そうなスポットがないか調べ、いいスポットがあれば一日二回行動も辞さぬつもりであった。

好奇心は全てを殺す

 ガイドブックを見ていてこんな記述を目にした

「シャンゼリゼ通りの凱旋門は夜ライティングがされており、近くのエッフェル塔は夜12時まで営業しているので深夜のパリを一望する事ができる」

 普通の時間に訪れて行列を作って並び、限られた時間養鶏場のひよこみたいに首を外につきだしておすすめの景色を眺めさせられるというのは個人的には非常に気が進まなかった。

 そんな私にとって、普段観光客もまばらで普通にやってきた観光客には決して見えない眺望を目にする事ができるのだ。

 これを見ないなら地面でも見ていた方がマシである。

 ホテルのフロントの兄さんにパリの地下鉄の路線図とホテルのIDカード、まあホテルの名刺を貰ってホテルのIDカードに書いてある住所から最寄りの駅を探し出してエッフェル塔近辺への路線を確認する。もちろん観光時の支払い料金もしっかり用意しぬかりがない。

 これくらいの事ができるようになっていたのは独りで旅していた時の経験のたまものである。

夢の終着駅

 待ち遠しい夜、それも夜10時以降の深夜がようやくやってきた。今から凱旋門とエッフェル塔のナイトツアー出発である。

夜の紳士の観光スポット

 路線図を頼りに地下鉄を乗り継いで目的地についた時には既に11時を回っていた

 コンパスを持っていないのでどっちに進むのが正解なのか分からなかったんである。ロスタイムを積み重ねはしたものの、何とか営業時間に間に合う事ができた。

 まず、夜の凱旋門に近づいてみる。

 昼間なら観光客でガードされていて近づけないような所だが、そこには私だけである。

 抱きついてみたりした。

 夜の凱旋門はライティングが華やかさを更に増しており、凱旋門をちょうどくぐるアーチの下に立ち真上を見上げるととてつもない高さにとてつもない質量のアーチがかかっていてきらびやかにライティングされている。

 「ははは、この景色が全て俺のもの、俺だけのものなんだ!」

 などと両手をひろげてぐるぐる回転しながら叫んでみた。おまわりさんはこなかった

油断大敵火がぼーぼー

 メインディッシュのエッフェル塔に乗る。

 切符を買って入口でもぎるだけの簡単なシステムになっており、乗降用のリフトには私以外にも観光客が数名乗っていた。

 目ざとい人というのはどこにでもいるらしい。

 眼下に広がるパリの街並みは、放射線状に広がる大通りを彩る車のランプで光の河になっており時間を忘れて見入っていた。

 本当に時間を忘れていて、周囲を見渡すと他の観光客は誰一人いない

 時間を見ると

   「夜12時ぃ!

 えらい遅い時間になってしまった。地下鉄の最終に間に合うだろうか。

 係のおっちゃんに駅までの最短ルートを聞き出して地上におりたつなり私は走り出した。

あの人は悪魔

 駅には順調に入れたのだが、一つ大事な事を忘れていた。

 帰るルートの確認をしていなかったのである。

 歩いてであっても、初めての場所に行くのと帰る時とでは全く違う道のように見える事はザラにある。

 ましてや初めて乗る地下鉄である。

 階段一個違う場所から降りてしまったら自分の不完全な記憶しかあてにするものがない。

 その、まさかである。

 路線だけは分かっていたのでホームにはたどり着けたのだが、どうやら列車によって行く先が違うらしい。

 途方に暮れていると

 「どうしたの?終電出ちゃったから帰りがわからない?」

 と大学生くらいのフランス人のお兄さんが声をかけてきてくれた

 ホテルの住所を見せると、

 「ああ、〇番目に来る電車に乗って×番目の駅でおりるんだ、いいかい?」

 当然の事ではあるが、〇だの×だのは私が聞き取れなかった箇所であり、要は何も理解できてないのである。

 よっぽどそのお兄さんのおうちに泊めてもらいたい所ではあったが、

 「何とかなるだろう(なるわけがない)」

 とお兄さんに手を振って電車に乗り込んだ。

 行先もわからぬまま。

ガチで終着点

 深夜のパリ中心部観光としゃれ込んだのはいいが、夢中になりすぎて終電を逃してしまい絶望していた所を親切なお兄さんに助けられた。

 が、私はお兄さんが英語で説明してくれた道案内が理解できず、そのまま見込み発車で来た電車に飛び乗った。

パリ中心部独りぼっち

 どこに行ってもパリ中心部からは遠ざかる事に間違いはない。

 私が宿を取っていたのはソルボンヌ大学の近く、つまりパリ中心部に属する地域である。

 たった数駅で地下鉄を降りた私だが、地上に出てみるとさっぱり何がどこだかわかりゃしない。

 来た事もないのに分かるなら私は人間ヤフーカーナビにでもなれた筈である。

 当時はスマホどころかPHSもろくにない時代だったので、迷子になるという経験はそうないと思うがこの時代は地図と方向感覚がないと簡単に迷子になっていた時代である。

 地図を広げても自分の居場所がわからないので何の役にもたちゃしない。

 幸いといっていいのか、パリ中心部だけあって数ブロックに一軒とか二軒のレベルだが屋台やバーのような店が酔客目当てに営業している。

 手がかりになるのはホテルで貰った住所の書いてあるIDカードだけであるが、空いている店を見ると飛び込んでそのカードを見せ

 「~~~~~~~~~~~~~~?(このホテルはどこにありますか)」と殆ど唯一使えるフランス語で情報を集めては目星のついた方向へと歩いていったのだった。

何いってんのかわかんねえよう、英語でしゃべれ

 目星をつけて歩いていっては不安になり、そういう所で出くわした店や雑貨店(コンビニ代わりである)に何回も同じ質問を繰り返す私。

 というのも、ホテルからエッフェル塔に行くまでは地下鉄数駅くらいしかかからなかったので、歩いてでもたどり着けない距離ではないという自信があったんである。

 また、私は留学してまで身に着けた英語を高校生レベルまで低下させてしまっているが、欧州という言語も国によって違う地域を旅するにあたり重要な文章を覚えてきていた。もちろん、会話ブックの類もあったが欧州全域の冊数を揃えるのは無理なのでスペイン語版だけは持っている。

 「〇〇はどこですか?」

 これを、私は日本語、英語、フランス語、スペイン語、イタリア語、ドイツ語で話す事ができるようにしてあった。

 後は応用である。

 〇〇の所には駅でもトイレでも銀行でも好きな単語を入れればいい。その国の言葉でどう発音したらいいのか分からなくても欧州の言葉の違いなんてのは方言みたいなもんだから単語なんざ隣の国の言葉でいやあ通じるだろうと踏んでいたのだ。

 この特技、案外役に立ったのでこれと「泥棒!」くらいは喋れるようにしておいた方がいい。

 そうやって聞き込み調査を繰り返した結果、神様だか守護霊様だかの大盤振る舞いで見た事のある街角に私はたどり着いた。

帰巣本能は犬なみ

 ホテルのIDカードを出して住所をチェックしても間違いない。

 帰ってこれたんだ・・・

 と、感慨にふけるのも早々にインターホンを鳴らしてホテルの兄さんを叩き起こして自室にへたりこんだ私だった。

 さすがに今回だけはだめかと思った。

 この記録を書くためにざっと試算してみたら、パリの中心部を横切って5㎞~6㎞は歩いてきた事になっており、本当にどうやってピンポイントに宿のある街角まで帰ってこれたのだろうかと背筋が寒くなった。

一番やってはいけない事

 さて、そんなこんなで人知れず深夜のパリで冒険を繰り広げる事になった私であったが、今この記事を書いていてひらめいた事があった。

 「深夜のぶっそうな中道もわからないで歩くくらいなら、どこかの店に入って朝を待ちタクシーに乗って帰ればよかったのでは?

 これが頭に25年遅れで浮かんだ時の私の微妙な表情は誰にも見せられない。

 あと、道に迷ったら自己判断で移動せず、状況が好転するまでその場から動かないというセオリーに真っ向から喧嘩を売っていたのに気づいた。

 道に迷ったと気づいたポイントが、正しいルートに一番近いのである(当たり前だが)。

  1. 知らない場所に出かける時は、帰りのルートも確認すること
  2. 何か予定外の出来事が起きたら、自分だけで何とかしようとしない
  3. 深夜に知らない場所に出てしまったら開いている店で朝が来るのをまつのも手
続きます

日本ブログ村 ストレスマネジメント

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

  • URLをコピーしました!

コメントをもらえるとうれしいです

コメント一覧 (4件)

  • ひろぽんサン、こんにちは!
    ドキドキしながら読ませて頂きました!!

    私も外国行く時は独り派なので(いや、日本でもリアルな友達いないに等しいのでひとりですが汗)、わかるわかる~♪と思いながら、ワクワクさせていただきました(^^
    この当時は今みたいに気軽に写真をばんばん撮れなかった時代ですが、ひろぽんサンの写ってるのとかあればup期待しています♪

    まだまだネット界から離脱気味のまかデシタ。
    平和な週末を過ごせてはりますように☆

    • まかさんコメントありがとうございます。

      独りで海外を彷徨っている時、なんで何事もなしに済んだのだという無謀な行動は結構ありますよね。
      私の旅行時の写真は残っているのですが、ブログに上げるのはどうかなあと思案中です。

  • こんばんは。楽しく読ませていただきました!

    文章のテンポと、自虐的とも言うのか、ご自分をわざと落として書いている中のユーモラスな言葉遣いが好きです!

    ひろぽんさんは、留学記の中にもありましたが、夜にウロウロしてしまうと言う運命なのですか!?

    パリでの迷子は、本当に焦ったのでしょうね。
    読んでいてハラハラさせられました。下手したら、強盗に出くわしてもおかしくないですよね。運が良かった。あ、ベルサイユ宮殿で、ウンが着きましたよね😆
    それは、ワンコに感謝しないと…。

    25年ぶりの気づきがあって良かったのか?
    どうなのか?
    何かと人生の指針になるような、格言っぽい記事でしたね。
    『迷ったと気づいたらそこが正しい場所に1番近い』何だか、役に立ちそうなお言葉、ありがとうございました😊

    他の記事も、読んできますね♪

    • まどかさん、コメントありがとうございます。
      お返事が遅れてすみません。
      本読みのまどかさんにお褒めいただくというのはうれしいものです。

      が、自分を落とすというよりは勝手に落ちているので芸ではないですね。夜にウロウロする話が多いのは、男性なので夜の街の怖さが身に沁みないという事が大きいと思います。

      25年ぶりの気づきは盲点でした。ただ、これを読んだ方に後日役立てばと思うのみであります。

      >『迷ったと気づいたらそこが正しい場所に1番近い』

      確かにいい事言ってますね。
      他の記事の感想もお待ちしております。

コメントする

目次