禁煙に挫折して電子タバコIQOSに悶絶

　理由と言えるのか自分でもあやしくなっているが、禁煙をはじめた。

理由や変化は後日。

　後日、というか一年以上放置してしまった。

私はタバコをこっそり吸って教師にどつかれるような中高生では無かったが、大学進学した瞬間からタバコを吸い始めた。

理由は分からない。

多分小説や漫画の影響で喫煙自体にかっこよさを見ていた気がする。

何故か。

　吸い始めたタバコが「ガラム」という香料入りのニコチン、タールが弱いもので18ミリとかいうマリファナ並みにキツイ代物かつ吸っていると中の香料（クローブ）が燃えて周囲が独特の香りに包まれるという歩く毒ガス兵器みたいな代物だったからだ。

　当時サーファーとかの間で流行していたと聞いて吸い始めたのだ

酒は止められてもタバコは止められません

　
学生時代から男性の友人の半分は非喫煙者だったのは当時としては珍しかったのかもしれない。

が、就職するとタバコ休憩とでも言わないと席から離れる余裕も取れず朝から終電まで働き続ける生活では禁煙しようという気にはさすがにならない。

タバコの為に離席するのもそう頻繁にはいかないし当時の1日あたりの消費本数は凄く少なかったと思う。

それからいくつもの職を経ている間のある時、思い立った私はアルコール依存症治療の為3か月入院した。

入院したての頃はまだ病院内に喫煙所があり、屋内は禁煙になっていた。

夜になると病棟の玄関は施錠されて外にタバコを吸いに出る事ができなくなる。

ほぼ全員喫煙者である入院患者にとって夜から朝の開錠までの時間は強制的に禁煙を強いられるので非常に苦しい時間であった。

アル中病棟で何故か禁煙治療

　毎朝、開錠の時間近くになると早く外に出て一服したい喫煙者たちが玄関前で待ち構えている。

そんなに吸いたいものかと思われるかもしれないが、夜中トイレで隠れて喫煙している所を見られて師長から事情聴取の上厳重注意をされるという不良学生のような真似をいい歳のおっさんがするんである。

甘いものが食べたくてしょうがないのに家には砂糖すらないという状況を考えてみればよい。

体が欲するものを抑えるのは大変辛いのだ。
　
　夜間タバコが吸えないと分かった私は見舞いに来た父からニコチンパッチを差し入れてもらった。

経皮吸収でニコチンを取り込みニコチンの離脱症状を抑えるという話であったがこれが又効かない事この上ない。

父が差し入れたのはニコチンパッチじゃなくサロンパスかなんかじゃないかと疑うほど喫煙衝動の前に無力だった。

そんなある夜、私は自分の病室で隠れてタバコを吸っていた。

病院なので窓は気持ち程度にしか開かず、できるだけタバコの煙や匂いも外に出そうと窓の隙間から顔を出しての情けない隠れタバコである。

当然匂いでバレたが阿呆のふりをして何とか誤魔化した。

隠れタバコの不良患者（おっさんたち）

禁煙パトロールVS入院患者

　
ある日、健康増進法の実施に伴う処置として喫煙所は解体され、院内は敷地を含めて全面禁煙となってしまった。

私たち喫煙者は病院に抗議したが当然黙殺されアルコールではなくタバコ吸いたさに夜悶えるようになった。

私も1日ひと箱は吸っていたタバコを急に禁止され、夜禁断症状に苦しみ枕を噛んでこらえながら

　「殺してやる、殺してやる、（タバコを吸えなくした全員）殺してやるぅう」

と悶え苦しんだ。

日中は院内を禁煙パトロールと称した職員が巡回し階段のかげや駐車場の隅など人の来なさそうな所で喫煙している患者を捕まえては学校で吸っている所を見つかり教師にはりたおされてるボンクラ学生のごとくお説教して回る。

私も1回使われなくなった廃屋の階段で隠れて吸っていた所を捕まった。

喫煙者たちは職員の見回いの死角を探し、タバコを屋外の自動販売機の上に隠したりと色々抵抗をはかった。

最終的に敷地外ではあるが病院の私有地である歩道でなら喫煙もお目こぼしされる事になったのだが、私以外の喫煙者も相当隠れタバコを見つかっていたに違いない。

　
　そんな中、私は父が禁煙外来から処方してもらったと禁煙補助薬「チャンピックス」を服用し始めたのだがこれが非常に良く効いた。

1週間もしない内に喫煙欲求は収まりタバコを吸わなくても平気になった。

病院のおかげというのは非常に腹立たしい話ではあるが、退院してからも禁煙したままでいられるようになった。

それから数年後、気づいたら私はタバコを吸っていた。


　あれ？私禁煙していた筈なのにいつタバコ吸い出したの？


どうやら専門学校に入学した後のようであった。

昼仕事をして夜専門学校に通う生活が予想以上にストレスだったのだろう。

まともに稼げない癖にタバコなぞにお金をかけるから金銭的には非常にキツくなり、父から小遣い代わりに2日にひと箱のタバコを貰う事になった。

そんな訳でいつ終わったのかもわからないまま禁煙に失敗し続けた私である。

　が、せっかく買ったものを捨てるのも勿体ないと我慢して吸っているうちに人間慣れるものである。

朝「まじぃよマジで」昼「まあ吸えなくもないわな」夜「むしろアリなのかも」1日で電子タバコに慣れてしまったのは早すぎかもしれないが、本当に人間慣れるものである。人類が持つ可能性を見出した私だった。

　そんな訳で電子タバコを無駄にせずに済んだのだが一つだけ欠点がある。

　別に紙巻きたばこを吸ってるのと価格の差がないので紙巻きたばこで1番安価なキャメル（￥４３０）の方が１００円安いのである。

ちなみに電子タバコのカートリッジはひと箱５３０円である。

おまけに充電ユニットなど使用する機器の価格まで考えたら元なぞ取れはしない。

匂いは本当に少ないのでいいのだけど。
　
なので紙巻きたばこと電子タバコを交互に吸っている貧乏根性の抜けない私であった。