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カノンの異常な健康とペット保険

大人しくしていると凛々しいカノン

  昔は子供も犬も猫もかなり乱雑な扱いを受けていました。

幼稚園の時、砂遊びをしていて僕の頭を鍬で耕したオバタくん元気かなあ。

そんな感じで犬も猫も外を自由に駆け回り、数年で死んでいったんです。

今は10年以上生きているのが当たり前になりました。

そうなると、ペットの医療も当たり前に考えなくてはなりません。

これは、私がシンガプーラのカノンと過ごした15年間の記録です。

(2022年9月22日初稿
 2023年9月2日加筆)

目次

カノンがウチにやってきた!世界一小さなシンガプーラ

 私が飼っている猫のカノン。

間抜けなのか鷹揚なのかはわからない性格なのだが一応私が親的立場である。

 世界で1番小柄な猫といわれるシンガプーラの♀で、もう14歳にもなる。

人間の年齢に換算すると大体60代なかば。

ある県にて独り暮らしをしていて、当時悪くなる一方だった精神衛生をなんとかしようとしていた私が、わざわざ西日本から埼玉のブリーダーを探し出し、軽四なら買える程度に財布をはたいてお迎えした当時の希少品種であった。

 今ではそこまで珍しい存在ではなくなったが、独り暮らしのマンションで窮屈な思いをしない小柄な体格でかつ温和な性格で…と一緒に暮らせそうな種は…と絞り込んでいった結果選んだのが人懐こさでも知られていた当時は希少種だったシンガプーラだったんである。

 西日本からネットで探して1番近かったのが埼玉県のブリーダーな時点で非常に希少種であったと理解できるだろう。

精神衛生の為ならあぶく銭なぞ惜しくはなかった追い詰められた独身特有の衝動的行動である。

まあ、いきなり「パティシエになりたいのでフランスに留学して修行します」などと言い出すのと根はあまり変わらない。

カノンという名前は実は母猫の名前をそのまま流用しただけである。

真面目に飼う気があったのかと言われそうな誠意の無さに見えるが、カノンという名前が気に入ってしまって他の案が色あせてしまっていたのだった。

 その後、岡山に一緒にUターンしてきてからのカノンは実家で家族にも可愛がられ、初老の子ども(私である)より両親にははるかに可愛がられているのは当然といえばそうである。

仕事や勉強より自分をかまえと訴える背中
これからしまわれてしまうカノン
棚の整理用ボックスの中がお気に入りのカノン

10歳を超えて心配になる事、健康

 1度仔猫の時に怪我をしただけでカノンは病気ひとつしないまま14歳になった。

獣医にお世話になったのは予防接種と避妊手術くらいである。

それでももしもの為にペット保険に入り続けていたのだが、ある時期働けず困窮していた時期に支払いが滞り解約されてしまっていた。

鍼灸師の専門学校に通い始めると更に余裕はなく自分の医療費のやりくりだけで悲鳴をあげていた。

金銭的な安定を得られたのは障害厚生年金を受給するようになってからである。

 余裕が出た時、ふと不安になった。

カノンも人間に換算すると60代、今までは病気と縁がなかったが持病の1つや2つ抱えていてもおかしくない。

保険に再加入する余裕もあるし手を打っておこう。

絶望的な手遅れ・・・そこに

 と、ペット保険を調べてみて愕然とした。

カノンは既に保険に入るには高齢すぎて加入対象外なのだ。

必死に高齢ペット向けの保険を探して1件だけ加入可能な保険を見つけて契約した。

アニコム損保という所のシニアペットを対象とした保険である。

高齢になると怪我や病気も出てくるだろうし保険に入っていないとえげつなくお金が溶けていくらしい。
ありがたい話である。

 が、この保険は手術・入院特化タイプで1番使用頻度が多くなると思われる通院は補償対象外なのだ。

困ったなあと思いつつ保険の内容に目を通していると、

「加入時に健康診断を受け、1年後も健康なら契約更新後『通院』も補償対象になります」

とあったではないか。

健康診断とは、保険の無料サービスの腸内フローラ測定、つまり検便である。

健康診断もしてくれる上に結果が良ければ病気で通院という一番お金がかかる所をカバーしてくれるとは素晴らしい。

早速測定サービスを申し込み、サンプルを採取して送り返した。

アニコム損保の高齢ペット用保険はこちら

不安を吹き飛ばすカノンの健康さ

だめな飼い主

 が、待てど暮せど結果が来ない。

人気サービスなのか申込みからの手続きにも結構時間が経ったので2ヶ月くらいは待つだろうと思っていたが音沙汰なし。

カスタマーサポートに問い合わせようと保険会社内のユーザーページに久しぶりにログインし、フローラ測定のサービスに関するページに入った。

すると、

 「結果はネットのユーザーページ内でお知らせします」

 とあり、しかも結果は既に出ていたではないか。

危ない所であった。さて、結果。
 
総括するとすごく良い。特に高齢の猫は衰えがちな腎機能は上位20%に入る最優である。

雄の猫などは腎結石での死亡率が高いと聞いており、まさかここまでカノンの腎臓が上部だとは思わなかった。

チャットサービスで問い合わせると

「腎機能が『最優』である事」

が2年目から通院に保険が使えるように保険のアップグレードがされる条件の1つであると言うではないか。

最優は全体の20%、つまりこの保険に申し込んだ人たちの80%は手術と入院にしか保険が使えなくて体調がちょっと良くないからと獣医師の所につれていく度に保険の補償なしの実費で診察代を支払わなくてはいけないのだ。

アニコム損保のこの「しにあ どうぶつ健保」があり、加入できたから良いものの本来は7歳11か月までに普通の「どうぶつ健保 ふぁみりぃ」に入っていないと無保険で怯えながら過ごす事になってしまっていただろう。

飼い主失格というか、人間としても失格気味なのに下手な事はするものではない。

支払いができずに保険会社に見限られて保険を切られたというのは40過ぎの男としては非常に情けない。

偉いカノン


 14歳なのに健康測定で最優なカノンは偉い。

この事だけでなく、高齢の猫にみられがちな腎機能の不調と無縁な事にすっかり嬉しくなった私はカノンを普段の2割増しで撫でてやった。

 まだ階段も駆け上がれるほど元気だが、おばあさんである。

 猫又になってもいいから長生きしろよ、と言い聞かせる。

 カノンは意固地なのか何なのか知らないが、人間の食べるものに全く興味を示さなかった。

 正確には、仔猫の頃一度夕飯のアユの塩焼きに手を出そうとした所を私につかまり、しっぽから逆さづりにされたんである。

 30秒もかからぬ出来事であったが、それ以来本当に人間が食べるものに興味を示さなかった。

 飲むものも水と決めていて、水であれば人の飲みかけであろうと顔をつっこんでいたが水以外のものはミルクすら飲んだ事がない。

 そんな事もあってか、年相応に老いたであろう体をいたわっていたとはいえ与えていたのは下記のようなものである。

 それも高すぎるな・・・という懐具合の時には廉価品の「シニア猫用」で誤魔化したりしていた。

 ごめんな、カノン。

 効き目ではない、どれだけカノンの為に何かしてやれたかという話である。

その後 2023年5月19日


 最初の健康診断後、順調に保険がアップグレードされてカノンは通院治療も保険で7割がカバーできるプランに加入できた。

アニコム損保が提携している病院なら、発行してもらった保険証を見せるだけで保険の手続きまでやってくれるので一旦全額払って還付を待つ…..という気の長い事をしなくていい。

保険の内容としては1段どころか13階段を飛び越えてそのまま飛び出しそうな程ありがたい。

月々の保険料も13階段並に急激にアップしたけど。

 「カノンのためにも頑張って働かなくちゃねえ」

家族皆がニコニコしていた。それぞれなりに可愛がっていたカノンの慶事が嬉しいのだ。

 そして、ごはんを食べオヤツも食べ、私を追いかけて階段を駆け上がってくるほど衰えの見えなかったカノンは2023年5月19日に死んでしまった。

その日も出勤する私を見送りに来て、ごはんを食べてオヤツもしっかり食べて家事をしている母を追いかけて階段を駆け上ったりしていた。

そしてカノンは一階の父の部屋でいつも丸くなるベッドの定位置でうたた寝をし、気が付いたら呼吸しなくなっていた。

 泣きながら駆け込んだ動物病院での

 「え?15歳?もっと若いかと思いました」

 「お腹を触ってもしこりや腹水もないし癌などの腫瘍ではないですね」

 「喉の炎症も見られないので呼吸器、循環器系にも異常があったとは思えません」

 「お代はいただけません、無料で結構です(泣きながらカノンの保険証を渡そうとした私に)」

 その日はどうやって家に帰り食事をして寝たのか覚えていない。

翌日火葬所で「いい子だね、カノン」と最後に頭を撫でてやると、カノンは冷たく硬くなっていた。

そして軽くなって家に帰ってきた。

まだ部屋にお骨をおいてごはんとオヤツ、水と花を手向けている。

逝ってしまったのが金曜日で、火葬場に連れていったのが日曜日と綺麗に週末で事を終えたカノン。

 ほんとうに、手のかからないやつだった。

カノンの居場所

8月、カノンの3回目の月命日が過ぎた。

お骨は私の部屋に安置しており、ごはんとオヤツに水、そしておもちゃを備えている。

「(カノンの飼い主は私なので)自分にできるのはこんな事だから」

と、母はこまめに花を手向けている。

カノンのお骨はこれからどうするか。よく眺めていた家の庭に埋めてやりたいがこの家にずっと私達が居るとは言いきれない。家族の墓に入れてやるのが常識的には良いのだろうがまだその気にはなれない。

「カノンはあんたのだからあんたがそうしたいならずっと部屋に置いていてもいいと思う」

姉はそう言う。

「もしあんたが先に死んだら、お骨にカノンのお骨も少し混ぜて墓に入れてやってもいいのよ?」

それはなんだか素敵な話に思えた。悪くない。

Twitterでシンガプーラの写真や動画がTLに上がってくると眺めてフォローしている。眺めていると、なんだか気持ちが満たされるのだ。猫は元々好きだったが、こんな気持ちになるのはシンガプーラを見ている時だけだ。

多分、これはカノンが私に残してくれたもの。

いつか又、シンガプーラと暮らしたいと思っている。多分本当のことになるといい。

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コメント一覧 (2件)

  • 泣きました。
    ポックを看取ったのは、私。
    先週の今日。
    いつも、その時がフラッシュバックされます。
    トラウマになりそう。
    ため息ばかりです。
    予測変換で、『ポック』が出ます。さらに泣きます。

    • まどかさん、辛いですよね
      日にちを数えたり、思い出して泣いたりしているうちに5回目のカノンの月命日がこようとしています
      思い出すと昨日のように苦しいのに日常生活は普通に送れることが不思議です

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